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2010 年12 月29 日

Q: 妻がうつ病で、私なりに献身的に看病し、見守り、気を使ってきました。その結果、疲れてしまいました。離婚できますか?

A: 配偶者が「回復見込みのない強度の精神病」に罹患している場合、夫婦関係は破綻していると評価され、離婚できる(離婚原因がある)ものと考えられています。
 強度の精神病とは、婚姻関係という夫婦の共同体を維持することが困難である(夫婦間で相互に協力し合うという義務を果たせない)と判断される程度の精神障害である必要があります。
 また、「回復見込みがない」と認定されるために、1果たして完全に回復するかどうか、2回復するとしてもその時期はいつになるか予測しがたい、3仮に将来回復に向かっても通常の社会人として復帰できるかわからない、4一家の主婦としての立場を全うできる見込みが極めて乏しい、といった事情が要求された過去のケースもあるので、簡単に認められるものではないと考えたほうが宜しいでしょう。
 さらに、配偶者が「回復見込みのない強度の精神病」に罹患している場合であっても、一切の事情を考慮したとき、婚姻関係を継続させるべき(継続させるのが相当)であると裁判所が判断するときには、離婚請求が認められないこともあります。精神病に罹患している配偶者の利益を守ることが、精神病にある配偶者との婚姻を継続していく側の請求を認めることよりも重要であると考えられるような場合です。
 離婚を請求する側としては、1配偶者の治療が相当長期間に及んでいたり、2専門医による科学的裏付に基づいて精神病であると言える場合であり、3誠実に療養や生活の面倒を見てきたことや、4離婚しなければならない事情があるなどの要件を満たすことにより、婚姻関係を継続させるべきという判断ではなく、離婚が相当であると判断される可能性が強まると考えられるでしょう。
 以上のとおり、配偶者が「回復見込みのない強度の精神病」に罹患していることを理由として離婚請求をすることは簡単なことではないですし、判断する裁判所の側としても困難な価値判断を強いられます。その結果、精神病を理由としてではなく、「婚姻を継続し難い重大な事由」がある場合に該当するという理由で離婚請求が認められることも、ままあります。
 それゆえ、うつ病の症状の軽重にもよるでしょうが、これが「回復見込みがない」精神病として認定されるかどうかは分かりません。したがって、併せて婚姻を継続し難い重大な事由があるということを積極的に主張していくことが必要となる可能性もあるでしょう。
 

投稿者:よしの たいら
at 15 :29| 離婚−離婚の理由 | コメント(0 )

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